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東京地方裁判所 平成7年(行ウ)260号 判決 1997年3月28日

東京都台東区上野三丁目一三番九号

原告

有限会社宝洋

右代表者代表取締役

大林幹雄

右訴訟代理人弁護士

小山勉

東京都台東区上野五丁目五番一五号

被告

東京上野税務署長 本田豊加

右指定代理人

仁田良行

渡辺進

木村忠夫

上田幸穂

山本善春

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が平成三年一二月二七日付けで原告に対してした昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額一八五三万八六九一円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。

2  被告が平成三年一二月二七日付けで原告に対してした昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度の法人税の修正申告に係る重加算税賦課決定を取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、飲食業を営む同族会社であるが、昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度(以下「係争年度」という。)の法人税につき、別表の「確定申告」及び「修正申告」欄記載のとおり、確定申告及び修正申告(以下「本件修正申告」という。)をした。

2  被告は、平成三年一二月二七日、本件修正申告について、別表の「重加算税賦課決定処分」欄記載のとおり重加算税の賦課決定(以下「修正分賦課決定」という。)をするとともに、原告の係争年度の法人税につき、別表の「更正処分等」欄記載のとおり、更正(以下「本件更正」という。)及び重加算税の賦課決定(以下「更正分賦課決定」といい、修正分賦課決定と併せて「本件各決定」という。)をした。

3  原告は、右各課税処分を不服として、平成四年二月二六日、被告に対し異議申立てをしたが、同年五月二五日付けで棄却されたため、同年六月二四日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、右請求は、平成七年六月二三日付けで棄却された。

4  しかしながら、本件更正のうち、本件修正申告に係る所得金額を超える部分は、原告の所得金額を過大に認定したもので違法であり、また、本件各決定も、課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実を隠ぺい、仮装した事実がないのにされたもので違法である。

よって、原告は、本件更正及び本件各決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の事実は認めるが、同4は争う。

三  抗弁

1  本件更正の適法性

(一) 確定申告に係る欠損金額 二七三万六八九二円

(二) 交際費等の損金不算入額 一二七万五五八三円

(三) 支払手数料の損金否認額 二〇〇〇万〇〇〇〇円

右金額は、原告が支払手数料として損金の額に算入していたものであるが、右手数料は、これを支払うべき根拠がなく、また、その支払の事実もないのに架空計上されたものである。

(四) 修正申告に係る所得金額 一八五三万八六九一円

右金額は、本件修正申告に係る所得金額であり、右(二)、(三)の各金額の合計額から(一)の欠損金額を控除したものである。

(五) 雑収入の計上漏れ額 二〇〇〇万〇〇〇円

右金額は、原告が、株式会社モトイ興産(以下「モトイ興産」という。)から賃借していた東京都江戸川区西小岩一丁目一九三四番地一八所在の鉄筋コンクリート造建物(以下「本件建物」という。)の一階部分の立退きに関する調停の結果、モトイ興産から受領した立退料八〇〇〇万円(以下「本件立退料」という。)のうちの二〇〇〇万円であり、原告が益金の額に算入していなかった金額である。

すなわち、原告は、本件立退料について、<1>昭和六三年一二月一五日に二〇〇〇万円、<2>平成元年二月二七日に六〇〇〇万円を受領したが、右<1>の二〇〇〇万円が、原告の代表取締役である大林幹雄(以下「大林」という。)名義の普通預金口座に入金され、原告の係争年度の収入金額として益金に算入されていなかったものである。

(六) 所得金額 三八五三万八六九一円

右金額は、原告の係争年度の所得金額であり、右(四)の修正申告に係る所得金額に、右(五)の雑収入の計上漏れ額を加算した金額である。

(七) 法人税額 一五二二万五九〇〇円

右金額は、右(六)の所得金額につき、法人税法六七条一項に基づき算出した法人税額である。

(八) 原告の係争年度の所得金額及び法人税額は、右(六)及び(七)のとおりであるところ、本件更正はこれと同額をもってされたものであるから適法である。

2  本件各決定の適法性

前記1(三)のとおり、原告は、支払うべき根拠も支払の事実もない架空の手数料を損金の額として計上し、また、前記1(五)のとおり、本件立退料のうち二〇〇〇万円を収入金額から除外して益金の額に算入せず、原告の係争年度の所得金額を過少に申告したものであり、これらの行為は、国税通則法(以下「通則法」という。)六八条一項に規定する「課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。

したがって、被告は、通則法六八条一項に基づき、本件修正申告により新たに納付すべきこととなった税額六八二万円(通則法一一八条三項により一万円未満切捨て)に一〇〇分の三五の割合を乗じて計算した金額二三八万七〇〇〇円につき、修正分賦課決定をし、また、本件更正により新たに納付すべきこととなった税額八四〇万円(通則法一一八条三項により一万円未満切捨て)に一〇〇分の三五を乗じて計算した金額二九四万円につき、更正分賦課決定をしたものであるから、本件各決定は適法である。

四  抗弁に対する認否及び原告の反論

(認否)

1(一) 抗弁1(一)、(二)は認める。

(二) 同1(三)のうち、原告が二〇〇〇万円を支払手数料として損金に算入していたことは認めるが、その余は争う。

(三) 同1(四)は認める。しかし、本件修正申告は支払手数料の架空計上を認めた趣旨ではない。

(四) 同1(五)は認める。しかし、二〇〇〇万円を益金に計上しなかったのは、本件立退料から支払手数料二〇〇〇万円を差し引いた六〇〇〇万円を計上すればよいと考えたためである。

(五) 同1(六)ないし(八)は争う。

2 同2は争う。

(原告の反論)

1 原告は、昭和六一年一一月ころ以降、有限会社大森ビル管理サービス(以下「大森ビル管理」という。)の代表取締役吉川勝之(以下「吉川」という。)とモトイ興産の社員である上杉正俊(以下「上杉」とう。)の来訪を受け、本件建物から立退きを求められたが、その交渉の過程において、原告は、立退料として手取り六〇〇〇万円を受領できればよく、それを超える立退料がモトイ興産から支払われれば、その分は、大森ビル管理に対し、立退き交渉に関する仲介手数料(以下「本件手数料」という。)として支払うことを承諾した。

2 その後、モトイ興産は、昭和六三年一月、原告に対し、本件建物の賃借部分の明渡しを求める調停(以下「本件調停」という。)を墨田簡易裁判所に申し立て、同年一一月、モトイ興産が原告に本件立退料八〇〇〇万円を支払うことで調停が成立したため、大林は、平成元年四月二〇日、大森ビル管理に対し、大林個人の資金から二〇〇〇万円を本件手数料として原告に代わって支払った(なお、右支払に際し、先に原告が大森ビル管理に一〇〇万円を貸し付けた時に吉川から預かった大森ビル管理名義の二〇〇〇万円の領収証を、株式会社ときわ(以下「ときわ」という。)名義の二〇〇〇万円の領収証と差し替えてほしいという話が吉川からあったため、大林は、これに応じてときわ名義の領収証を受領したものであり、右ときわ名義の領収証は、原告が本件手数料として二〇〇〇万円を支払った事実を証明すものである。)。

3 原告は、モトイ興産から本件立退料収入八〇〇〇万円を申告する際に、本件手数料二〇〇〇万円を差し引いて申告してよいと考え、六〇〇〇万円を収入として確定申告したのであるが、本件手数料二〇〇〇万円を損金にも算入してしまったことに気づいたため、本件修正申告により、この誤りを是正したのである。したがって、被告が主張するような架空の手数料を損金計上したものではなく、修正分賦課決定は理由がない。

また、原告は、本件手数料二〇〇〇万円を大森ビル管理に支払っているのであるから、雑収入を八〇〇〇万円に更正するのであれば、本件手数料二〇〇〇万円を損金に算入しなければならないのであって、右損金算入をしなかった本件更正は原告の所得金額を過大に認定した違法なものであり、右更正を前提とする更正分賦課決定も違法である。

第三証拠関係

本件記載中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

第一課税処分等の経緯について

請求原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

第二本件更正の適法性について

一  抗弁1(一)、(二)、(四)、(五)は当事者間に争いがない。

二  原告は、本件手数料二〇〇〇万円を損金に算入すべきである旨主張するので、検討するに、成立に争いのない乙第一号証、第五号証、第七号証、第八号証の一、第一七、第一八号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第六号証、第八号証の二、証人吉川勝之の証言により成立の真正を認める乙第三、第四号証、弁論の全趣旨により成立の真正を認める乙第二号証、原告代表者本人尋問の結果(後記惜信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  モトイ興産は、昭和六一年三月ころ本件建物を購入し、建て替えのため本件建物内の各テナントに立退きを求めることとし、モトイ興産の取締役であった上杉が一階ないし三階部分のテナントとの立退き交渉を担当することとなり、一階部分で居酒屋を営業していた原告とも立退きについて交渉することとなった。

昭和六二年中には、二階以上に入居しているテナントとの間の立退き交渉がまとまったが、一階部分の原告との立退き交渉は難航し、なかなかまとまらなかったことから、モトイ興産は、昭和六二年一二月、顧問弁護士である國吉克典(以下「國吉弁護士」という。)にその解決方について相談した。上杉からの話を聞いた國吉弁護士は、原告に対し、内容証明郵便で賃貸借契約の解約の申入れをしたところ、申入れには応じられない旨の回答書が送付されてきたため、翌昭和六三年一月、原告を相手方として墨田簡易裁判所に本件調停の申立てをした。

2  本件調停には、モトイ興産側から國吉弁護士、上杉が、原告側からは大林がそれぞれ出頭して交渉がもたれたが、途中、原告から、新ビル一階への入居と新ビル建築中の営業補償の要求、あるいは立退料として手取で八〇〇〇万円(税金相当額を含めると約一億五〇〇〇万円)といった要求が出され、モトイ興産からは、立退料六〇〇〇万円と新ビルの地下への再入居という提案がされ、約一〇回の調停期日が開かれたほか、國吉弁護士が期日外に三回原告方を訪れるなどし、結局、昭和六三年一一月二九日の調停期日において、立退料を八〇〇〇万とすることで合意し、モトイ興産が原告に対し、昭和六三年一二月一五日限り内金二〇〇〇万円を、昭和六四年二月末日限り建物明渡しと引換に残金六〇〇〇万円を支払う旨の調停が成立した。

3  ところで、吉川は、大森ビル管理がかつて本件建物の管理をしていたことから(なお、モトイ興産は、本件建物購入後、株式会社美建にその管理を委託しており、大森ビル管理に本件建物の管理を委託したことはない。)、大林と面識があり、そのいきさつは定かでないものの、調停申立て前に上杉と原告との間で行われていた立退き交渉にかかわるようになったが、モトイ興産が吉川ないし大森ビル管理に右立退き交渉を委任したことはないし、原告も、吉川ないし大森ビル管理に立退きについての仲介を委任したということはなかった。しかし、いずれにせよ、前記のとおり、モトイ興産と原告との立退き交渉はまとまらず、本件調停が申し立てられたものであり、その後は、専ら國吉弁護士と大林との間で話し合いが進められ、その間、吉川は、一切これに関与しておらず、調停の期日や期日外でその交渉にあたったということも全くなかった。

4  原告は、昭和六三年一二月一五日、モトイ興産から本件立退料の内金二〇〇〇万円を小切手で受領したが、右小切手は、同日、大林の個人名義の普通預金口座に預け入れられて換金された後、同口座から、同月二〇日に、一七七万六七〇〇円(振込手数料を含む。)が大林宅のエアコン等設置費用の支払のために振込送金され、また、一八二三万円が大林個人名義のMMC(市場金利連動型定期預金)に振り替えられた。なお、本件立退料の残金六〇〇〇万円は、平成元年二月七日、小切手で原告に支払われている。

5  その後、原告は、平成三年七月ころから法人税の税務調査を受けたが、その際、大林が、税務職員に対し、モトイ興産との立退き交渉に関して、本件手数料二〇〇〇万円をときわに支払った旨説明し、ときわ名義の領収証(甲第一号証)を提示したため、税務職員がときわの代表者である相原和夫(以下「相原」という。)や吉川から事情を聴取したところ、両名とも二〇〇〇万円の手数料の受領を否認し、右領収証は、相原が謝礼をもらって吉川を経由し原告に差し入れたものである旨述べ、その旨記載した「申し述べ書」(乙第二、第三号証)なるものを提出した。その後、大林は、本件手数料二〇〇〇万円の支払先は、ときわではなく大森ビル管理の吉川であると説明を変更し、税務職員が再度吉川に確認をしたが、吉川は二〇〇〇万円を受領した事実はない旨述べた。

三1  原告代表者本人尋問の結果中には、原告は、立退料として手取六〇〇〇万円をもらえばよく、それを超える分は吉川の取り分とする旨を吉川と約束し、大林は、平成元年四月二〇日、その個人資金の中から二〇〇〇万円を吉川に支払ったなどの供述部分があるが、しかし、<1> 原告代表者本人の供述によっても、原告とモトイ興産との立退き交渉において吉川がいかなる役割を果たしたというのか明らかでなく、そのような吉川に対して、原告に支払われる立退料の中から吉川の取り分なり手数料なりを支払うなどという合意をするのは極めて不自然であること、<2> しかも、前記認定のとおり、本件調停において、原告は、新ビルへの入居であるとか、立退料として手取で八〇〇〇万円(税金相当額を含めると一億五〇〇〇万円)を要求し、何回もの調停期日が開かれているのであって、そのような原告の対応からすると、原告において六〇〇〇万円を超える分は吉川に支払うなどという合意をしていたとは到底考えられないこと(なお、原告代表者本人は、上杉との間で、本件調停前に立退料を八〇〇〇万円とする合意ができていた旨供述するが、前記認定の調停の経緯に照らし信用することができない。)、<3> 前記認定のとおり、本件立退料の金額は、本件調停申立て後、大林と國吉弁護士との交渉によってようやく合意に達したもので、吉川はこれに関与していないのであるから、原告が自ら行った交渉により決まった立ち退き料の四分の一に相当する二〇〇〇万円もの手数料を吉川に支払うというのは、通常の経済人の行動として合理性がなく、不自然であること、<4> 大林が、本件手数料の二〇〇〇万円を吉川ないし大森ビル管理に支払ったとすれば、その支払先である吉川ないしは大森ビル管理の発行した領収証を所持していて当然であるのに、原告は、ときわ名義の領収証を受領したというのであり、その理由として、原告は、吉川の要望により大森ビル管理発行の領収証と差し替えたと主張し、原告代表者本人は、吉川と相原は同じ仲間だからときわ名義の領収証でも気にとめなかった旨供述しているが、その主張は必ずしも一貫していないばかりか、その主張及び供述は、いずれも原告が支払先の領収証を所持していないことの理由としては合理性がなく納得しがたいことなどを考えると、原告代表者の本件手数料に関する前記供述部分は、到底措信することができないし、前記認定に反するその他の供述部分も前掲各証拠に照らしてにわかに措信することができない(なお、大林作成のメモである甲第一〇号証にも本件手数料の支払を合意し、吉川に二〇〇〇万円を支払ったかのような記載があるが、右記載部分も前記と同様の理由により採用することができない。)。

2  また、証人吉川は、大林が平成元年四月二〇日に現金で二〇〇〇万円を支払い相原がこれを受けとった旨証言するが、同証人は、他方において、大蔵事務官の事情聴取の際に原告から二〇〇〇万円を受領していない旨答えたことは間違いないと証言するほか、右二〇〇〇万円の趣旨についても、ときわの運転資金としてもらったものであるとか、返済すべきものかどうかわからないと証言するなど、二〇〇〇万円の授受についての証言内容は、極めて曖昧で一貫性に欠け、前後矛盾したものとなっており、到底信用することができない。

3  なお、甲第二号証(吉川作成の念書)には、吉川が平成元年四月二〇日に本件手数料として二〇〇〇万円を受領した旨の記載があるが、吉川は、本法廷における証人尋問において、右甲第二号証の記載内容が真実かどうかについては答えられない旨述べており、他方、成立に争いのない乙第一五号証によれば、吉川は、平成八年二月七日、大蔵事務官の事情聴取に対し、本件手数料二〇〇〇万円を原告から受領したことはなく、詳しくはいえないが、男の約束があったため、大林の要請に基づいて念書(甲第二号証)を書かざるを得なかった旨供述していることが認められるのであって、甲第二号証の記載もにわかに信用することができず、これをもって原告の主張を裏付ける資料とすることはできない。

四  以上のとおり認定、検討したところからすれば、原告が吉川ないし大森ビル管理との間で本件手数料を支払う旨の合意をしたことはなく、また、大林がその個人資金から吉川ないしは大森ビル管理に対し、本件手数料として二〇〇〇万円を現実に支払ったとの事実も認められないのであり、本件手数料を原告の係争年度の損金に算入することはできない。

そうすると、原告の係争年度の所得金額は、前記当事者間に争いのない抗弁1(二)、(五)の各金額に、支払手数料(本件手数料)の損金否認額二〇〇〇万円(抗弁1(三))を加算した金額から、抗弁1(一)の確定申告に係る欠損金額を控除した三八五三万八六九一円となり、本件更正には所得金額を過大に認定した違法はなく、弁論の全趣旨によれば、本件更正に係る法人税額一五二二万五九〇〇円は法人税法等を適用して適法に算出されたものと認められる。

第三本件各決定の適法性について

一  修正分賦課決定について

既に検討したとおり、本件手数料は、その支払の合意もなく、また、支払の事実も認められないものであるのに、原告は、ときわ名義の領収証を利用して、これを損金の額に計上し、係争年度における所得金額(欠損金額)を過少に申告したものであり、かかる行為は、通則法六八条一項にいう課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装し、これに基づいて納税申告書を提出していたときに当たるものというべきであるから、修正分賦課決定は、通則法六八条一項、同法施行令二八条一項の規定に基づき適法に算出された重加算税を賦課するものと認められる。

二  更正分賦課決定

本件更正が適法であることは前示のとおりであるところ、前記認定した事実及び争いのない抗弁1(五)によれば、原告は、モトイ興産から支払われた本件立退料八〇〇〇万円のうち、二〇〇〇万円を大林の個人名義の預金口座に入金し、原告の収入金額から除外して、係争年度に係る所得金額を過少に申告したものであり、かかる行為は、通則法六八条一項にいう課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装し、これに基づいて納税申告書を提出していたときに当たるものというべきであるから、更正分賦課決定は、通則法六八条一項の規定に基づき適法に算出された重加算税を賦課するものと認められる。

第四  以上の次第で、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤久夫 裁判官 岸日出夫 裁判官 徳岡浩)

別表 課税処分等の経緯

<省略>

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